2024年10月25日(金)、虎ノ門ヒルズフォーラムにて、「一般社団法人AIガバナンス協会設立記念シンポジウム」を開催しました。
AIガバナンス協会(AIGA)は、2023年10月の任意団体設立以降、AIのリスクを管理し、その便益を最大化するための取組である「AIガバナンス」の普及促進のため活動してきました。民間での自主的なAIガバナンス実装の取組を推進するべく、産業横断での知見蓄積や政策・制度への提言を主導し、約70社規模まで会員企業を拡大するとともに、関係省庁や公的機関などとの連携も深めてきました。
こうした活動実績の蓄積とプレゼンスの拡大を踏まえ、民間の自主的な取組団体としての役割の拡大や渉外・提言活動の拡充を図るため、2024年10月、従来の任意団体から一般社団法人に体制と活動を移行しました。
以下、一般社団法人化後初の大規模イベントとなる設立記念シンポジウムの様子の一部をお伝えします。
開催概要
主催:一般社団法人AIガバナンス協会(AI Governance Association)
日時:2024年10月25日(月)13:00-17:00
会場:虎ノ門ヒルズフォーラム Hall B(東京都港区虎ノ門1-23-3 虎ノ門ヒルズ森タワー4階)
オープニングスピーチ
登壇者
生田目 雅史(なまため まさし)代表理事 東京海上ホールディングス株式会社 専務執行役員 グループCDO
開会に寄せて、生田目雅史代表理事からオープニングスピーチを実施しました。まず、AIGAが2023年10月に任意団体として発足し、約1年で70社近くの会員規模に拡大するまでの各種活動のあゆみを改めて紹介しました。続いて、AIガバナンスの社会実装を目指すべく業界横断のハブとしての重要な役割を担っている現状に照らし、民間の自主取組団体としてのAIガバナンス社会実装、ポリシーメーカー等との連携のさらなる強化のため一般社団法人化に至った経緯を振り返りました。
「AIガバナンス」があたりまえのものとして定着した社会の実現というAIGAのミッションや重視する価値にも触れながら、今後も運営体制の強化やネットワークの拡大、さらなる実践知の蓄積を通じてAIガバナンスナビを活用したスタンダードの形成と、政策や制度枠組みへの積極的な提言を進めていく方針が伝えられました。日本を牽引するAIガバナンスのハブとなることを目指している点についても強調されました。
最後に、AIGAの今後の活動について3つの思いが語られました。
- AI開発の進展に追いつくため、スピード感を持った活動を行う
- AI開発者・提供者・利用者や産業を横断し、マルチステークホルダーの知見を集約する
- 知見の集約と概念化を通じて、AIがもたらすリスクとメリットの境界線を明確に見極められるようになる
キーノートスピーチ
登壇者
平 将明(たいら まさあき)デジタル大臣 自由民主党デジタル社会推進本部「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」前座長
キーノートスピーチには、平将明デジタル大臣より日本のAI政策に関するお考えとAIGAへのエールを交えビデオメッセージをお寄せいただきました。平大臣は「自民党AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」の座長を務め、日本におけるAI政策の議論をリードされてきました。AIGAも2024年2月に同プロジェクトチーム会合にて登壇・提言を行い、その後も対面イベントへの招致など継続的に交流を重ねています。
日本におけるAIガバナンスについては、ガイドラインや民間の自主的な取組を主としつつ、リスクが高い部分について法制度導入を検討する方針が示されました。その中で、進化が激しい生成AIの技術・リスク動向に応じたアジャイルなアプローチの重要性、行政自身がAIを活用するためのハッカソンの構想にも触れられました。
「世界一AIフレンドリーな国」日本の実現のためには、AIの進化に応じたマルチステークホルダーでのAIガバナンスの在り方に関する議論や、AIに関わるプレイヤーによる政府への提言が重要であることも強調されました。今後のAIGAとの連携強化への期待を込めつつ、そのステップとしての一般社団法人化へのお祝いの言葉をいただきました。
AIガバナンス協会のこれまでの道のりと今後:新体制アナウンス・役員メッセージ
登壇者(登壇順)
佐久間 弘明 (さくま ひろあき)業務執行理事 AIGA事務局長
瀬名波 文野(せなは あやの)理事 リクルートホールディングス 取締役 兼 常務執行役員 兼 COO
長谷 友春(はせ ともはる)業務執行理事 有限責任監査法人トーマツ パートナー
松田 浩路(まつだ ひろみち)理事 KDDI株式会社 取締役執行役員常務 CDO 先端技術統括本部長
鶴野 智子(つるの ともこ)監事 CSRデザイン環境投資顧問株式会社取締役・公認会計士
山本 忠司(やまもと ただし) 理事 三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役常務 リテール・デジタル事業本部長兼グループCDTO(ビデオメッセージでの登壇)
一般社団法人としての新体制の役員から、来場者に向けて就任挨拶を行いました。
佐久間理事からは、AIのもたらす問題を私たちが「リスク」とフレーミングしていることを踏まえ、関係者で連携しての受容可能な水準までAIリスクを軽減することと、万が一問題が生じた際に責任を果たすことができる体制の整備が重要な要素として提示されました。これらの取組を進めるために、AIGAが拠点となって「誰がいかなる決定に責任を負うべきか」に関するマルチステークホルダーでの議論を主導する意気込みが述べられました。また締めくくりに、AIGAの今後の課題のひとつとして、様々なレイヤーでの「ダイバーシティ」の確保が挙げられました。スタートアップを含むより多様な企業や、ジェンダー等さまざまな観点での多様な人材の参画する議論の場作りを通じて、AIガバナンスの議論により幅広い視点を導入していくことが重要だと述べられました。
瀬名波理事からは、キャリア支援などに関わるリクルートグループの事業の具体例を交えながら、AIガバナンスに関する課題について共有がありました。課題意識を持つところからさらに前進するために、具体的な失敗や悩みを共有し、産業や社会の発展に貢献するAIガバナンスのあり方を真剣に議論できる場としてのAIGAへの期待が示されました。そのためには、ガバナンスの現場の人材やポリシーメーカーなど様々な立場の人が集まり、机上の空論ではなく、現実的な悩みや知恵を蓄積することが重要とも述べられました。
長谷理事からは、AIサービス提供者と利用者の両方の視点からリスクマネジメントに関する課題についての見解が共有されました。その上で、AIGAが検討・提言に取り組んできた認証制度のような、AIガバナンスに関する第三者的な視点からの信頼性確保の枠組みが、AIバリューチェーン上の異なる立場の事業者にとって有用なものになるとの示唆がありました。AIガバナンス認証制度構想は政府が目指す方向性とも合致しており、今後さらに活動を推進していく方針が伝えられました。
松田理事からは、過去の情報通信分野での新技術の登場と利活用におけるガバナンスの趨勢を振り返りつつ、AIの利活用における日本企業の委縮を打破する手段がAIガバナンスであるとの見解が示されました。さらに、新規就任理事として、KDDIがこれまでに通信事業者として培ってきた知見や計算資源の確保、モデル開発、プラットフォームの提供までにまたがるAI事業の知見を協会活動に還元していく意気込みが述べられました。
鶴野監事からは、サステナビリティの観点からAIガバナンスをどう捉えるべきかについて見解の共有がありました。国連責任投資原則(PRI)が毎年開催する国際会議では、今回初めてAIが主要なトピックとなるなど、AIには投資の世界でもますます注目が集まっています。従来、別々に議論されることが多かったAIガバナンスとサステナビリティが次第に融合し、各領域での取組の相乗効果が期待されるという見解が示されました。サステナビリティもAIガバナンスもその重要性が急速に増しており、多様なステークホルダー間での議論が不可欠との考えが述べられました。
山本理事からは、ビデオメッセージを通じて金融業界のAI活用状況に即した視点共有がありました。かつてからAI活用によるサービス向上が進んできた金融業界では、今後は生成AIの導入により、さらなる顧客体験の向上や業務効率化が期待される一方で、AI導入に伴うリスクへの適切な対応が課題認識として示されました。AI導入には様々なリスクが内在しているものの、適切に活用することでリスク管理やコンプライアンスの強化にもつながるとの見解の共有ののち、会員と共同での持続可能な成長に向けた取組への期待が示されました。
AIガバナンス協会のこれまでの道のりと今後:「AIガバナンス:What/WhyからHowへ」
登壇者
大柴行人(おおしば こうじん)代表理事 Robust Intelligence共同創業者・Cisco Director of AI Engineering
続いて、大柴行人代表理事より、「AIガバナンス:What/WhyからHowへ」をテーマとしたビデオ講演で、AIGAの活動は、AI活用の本格化や事業への浸透を踏まえ、AIガバナンスの「How(どのように行うか)」の議論と実践を推進するフェーズに移行する方針が語られました。
AIGAでは、これまでも協会内外、産学官のステークホルダーとの連携を通じて、AIガバナンスの「What(何をするか)」と「Why(なぜ必要か)」の議論を深め、「AIガバナンス行動目標」の策定と浸透、駐日EU代表部との議論、数々の政策提言を手掛けてきました。
大柴理事からは、「攻めのAIガバナンス」の視点で、AI活用を推進するためにこそガバナンスを行うべきだという基本的な考え方を振り返った上で、今後のAIガバナンス実装のより一層の本格化に向けて、3つの観点から「How(どのように)」の取組をさらに進めていく方針が語られました。特に、AIGAが開発を進める「AIガバナンスナビ」は政策・標準ともアラインした実践のスタンダード確立に資する取組であり、今後のさらなる取組発展に期待が寄せられます。
- 技術を活用したガバナンスの強化: 人力によるリスク管理の限界を克服するアプローチとして有効
- 国際標準に基づく評価・保護: グローバルな技術・標準団体の具体的・実践的な検討状況を参照
- KPIによる課題・ゴールの明確化: 「AIガバナンスナビ」の測定と更新により、Howの成熟度を継続的に向上
AIガバナンス協会のこれまでの道のりと今後:パネル「AIガバナンス実装の現在地〜AIガバナンスナビトライアルを読み解く」
パネリスト(五十音順)
孝忠 大輔(こうちゅう だいすけ)様 日本電気株式会社 アナリティクスコンサルティング統括部長 AIGA AIガバナンス実装WGヘッド
佐藤 竜介(さとう りゅうすけ)様 東京海上ホールディングス ビジネスデザイン部マネージャー AIGA 政策提言WGヘッド
長谷 友春(はせ ともはる)業務執行理事 有限責任監査法人トーマツ パートナー
モデレータ兼パネリスト
平田 泰一(ひらた やすかず)様 シスコシステムズ合同会社 Business Development Manager AIGA 行動目標WGヘッド
続いて、「AIガバナンス実装の現在地〜AIガバナンスナビトライアルを読み解く」をテーマに、AIGAが開発を進めるAIガバナンス実装状況の自己診断ツールである「AIガバナンスナビ」のトライアル結果について、検討委員によるパネルディスカッションが実施されました。
AIガバナンスナビは、AIGAが掲げる指針である「AIガバナンス行動目標」の実現に必要なアクションアイテムをリスト化し、AIGA会員が自社のガバナンス進捗度を測定し、達成状況や課題を把握できるようにするツールです。AIガバナンスの社会実装に向けた道標として、「実践のスタンダード作り」「活動のペースメーカー」「政策・標準との接続」の3つの目的を掲げています。協会内での議論・ケーススタディの蓄積を踏まえたリストの策定作業や会員検討会を経て、本年10月、会員企業における個別AIユースケースを対象にトライアル診断を実施しました。
本セッションでは、トライアル結果の全体傾向と、アクションアイテムの領域別の特徴を概観した後、結果の解釈や今後の発展の方向性について議論が交わされました。
トライアルは、全体で35のアクションアイテムを「ルール・プロセスの明文化」「周知徹底・人材育成」「組織体制整備」「各リスク領域への対策」「ガバナンス遂行の透明性・適正性確保」の5領域に分類して実施し、以下のような傾向と受け止めが示されました。
- 「ルール・プロセスの明文化」: 指針レベルのポリシー、現場での留意事項や対処を示すAI利用ルール・管理ルールの策定は、従来的なIT・デジタル分野より早く進んでいる印象。今後の環境変化を踏まえたルールの適宜の見直しや、リスクベースアプローチの徹底が課題。
- 「周知徹底・人材育成」: 研修等を通じた、幅広い社内関係者向けのAIリスクに関する周知徹底は広がっている一方、リスク管理を担う専門人材の要件定義や育成の本格化は各社模索中と考えられる。
- 「組織体制整備」: 対象ユースケースの責任者の明確化や部門間の連携促進などは多くの企業で高水準で達成されており、全社規模での体制確立に発展させていくことが望ましい。
- 「各リスク領域への対策」: 個人情報、知的財産権の保護については一定の運用の整理・対策が進んでいるが、人力での監視・検証が難しいAIモデル・アプリケーションの精度低下や出力のバイアス、悪用への技術的な対策の進捗度合いには企業によるばらつきがある。
- 「ガバナンス遂行の透明性・適正性確保」: AIガバナンスにおいて第三者的な視点を交える、継続的に実施する、監査可能性を確保するなどの取組の整備は、全体的に今後深化の余地が大きい。対外的な説明責任を果たす上で第三者検証が有効であり、第三者的な監査・認証の実現のためには示すべきガバナンスの情報に関する認識を揃え、標準化していく必要がある。
AIガバナンスの未来を考える:パネル「経営アジェンダとしてのAIガバナンス」
パネリスト
大谷 健(おおたに けん)様 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 クラウド&AIソリューション事業本部 データプラットフォーム統括本部本部長
松田 浩路(まつだ ひろみち)様 KDDI株式会社 取締役執行役員常務 CDO 先端技術統括本部長(AIGA理事)
森 正弥(もり まさや)様 博報堂DYホールディングス執行役員 Chief AI Officer 兼 Human-Centered AI Institute代表
モデレータ
堀田 みと(ほった みと) AIGA事務局次長
続いて、日本マイクロソフト大谷様、KDDI松田様、博報堂DYホールディングス森様という多様な業界からの経営者をゲストに迎え、「経営アジェンダとしてのAIガバナンス」をテーマに、パネルディスカッションが実施されました。
まず、AIを基軸として通信・マーケティング・ITソリューションの事業の在り方を大きく変革していく各社のAIに関する取組を紹介いただきつつ、①なぜ今経営者として「AIガバナンス」を重視する必要があるか、②開発・提供・利用のバリューチェーン上の異なる主体同士の役割分担と協調の在り方、③今後の市場・社会におけるAIガバナンスをどう見ているかをトピックとして議論いただきました。
AIモデル・AIアプリケーションの本格導入や、「マルチモーダル化」「マルチモデル化」「マルチエージェント化」が急速に進んでおり、顧客への提供価値を高めるためにガードレールとしてのAIガバナンスの整備が急務であり、技術進歩に合わせてガバナンスも柔軟に更新していく時代が来るということが繰り返し言及されました。AIが生活に浸透する中、一般消費者も含めたあらゆる主体が、著作権などの権利や学習データに関するリスクと責任をよく理解し、他のステークホルダーへの説明責任を果たしていくことの重要性を共有しつつ、バリューチェーンにまたがる各社からの取組紹介もいただきました。
締めくくりとして、各パネリストから、AIGAが中心となって、AIガバナンスの在り方について不断の議論とアップデートを続け、日本ならではの実践の知見の蓄積と国際的な発信を行っていくことへの期待のメッセージが述べられました。
AIガバナンスの未来を考える:パネル「社会はAIリスクとどう向き合うか〜『信頼』実現へのアプローチ」
パネリスト
寺岡 秀礼(てらおか ひでゆき)様 (独)情報処理推進機構 AIセーフティ・インスティテュート 副所長
原山 優子(はらやま ゆうこ)様 東北大学名誉教授 (独)情報通信研究機構 GPAI東京専門家支援センター センター長
妹尾 義樹(せお よしき)様 (国研)産業技術総合研究所 標準化オフィサー、AI品質マネジメントイニシアティブ会長
モデレータ兼パネリスト
佐久間 弘明 (さくま ひろあき)業務執行理事 AIGA事務局長
続いて、「社会はAIリスクとどう向き合うか〜『信頼』実現へのアプローチ」をテーマに、パネルディスカッションが実施されました。
初めに、AI活用に関わるリスクの特徴について議論が行われました。AIは目的の汎用性、特有の帰納的なアプローチ、リリース後の性能変化の大きさといった固有の特徴を持ち、従来型のリスク管理が難しい状況が生じています。AI活用の各段階に存在する変化の要因を踏まえ、関係者間での責任関係を議論していかなければならないことが示唆されました。
続いて、AIリスク対策のアプローチについても、各機関のこれまでのアウトプット等にも触れながら意見が交わされました。AIの特性上「100%の安全性」を保証することが難しい中、受容可能なリスクレベルへの低減を図るための手法の確立が求められることが触れられました。また、AIの安全性評価において、リスク評価の観点やテスト手法の標準化が重要であることや、多様なステークホルダーの視点を取り入れるためのライフサイクルアプローチや国際連携の重要性についても議論されました。
さらに、AIリスク対策のための各セクターの協力のあり方についても議論が行われ、公的機関やAIGAを中心とする民間企業が分担すべき役割について見解が交わされました。民間企業が積極的にリスク対策を推進していくことの重要性や、技術・ビジネス双方の視点を交えて適切なリスクテイクを支えるエコシステム構築の必要性について議論がなされました。
最後に、今後のAIガバナンスの展望についても議論がなされました。AIに関して様々な社会的な議論が行われる中で、明確な「答え」を誰も持っていないケースも多く見受けられます。AIGAを中心とする民間企業もあるべきガバナンス像を未来志向で主体的に考え、発信していくことが重要であるとの見解が示されました。締めくくりにはこの議論を踏まえ、AIGAが様々なステークホルダーの結節点となり、そうした議論をリードしていきたいというメッセージが佐久間理事から述べられています。
クロージングスピーチ
登壇者
羽深 宏樹(はぶか ひろき)代表理事 一般社団法人AIガバナンス協会代表理事 スマートガバナンス 代表取締役CEO・京都大学特任教授・弁護士
会の締めくくりに、羽深代表理事から、世界でも稀有な民間主導のイニシアチブであるAIGAの今後の展望が語られました。
世界経済フォーラム、G1、OECDや海外大学での講演経歴を数多く有する羽深代表理事の視点から、少子高齢化・労働力不足を背景にAIを受容する素地がある日本のAI政策の特徴的な立ち位置や、海外からの関心の高さに触れつつ、民間主導の業界団体としてAIGAが国際的に見ても極めて大きな成功をおさめてきたことの振り返りがありました。激しい各国の制度・標準類の動向の一つ一つに惑わされることなく、AIGAでの実践例の積み上げを通じてベストプラクティスを構築することの重要性が強調されました。
続いて、今日の議論が果たしてAIだけに留まるものなのかという問いかけを通じ、より目線を上げた社会全体でのガバナンスの観点からAIガバナンスを捉える視点が共有されました。AIに特有のものであるかのように考えられがちな公平性は人権問題、セキュリティは安全保障、環境への影響はサステナビリティ、そして安全性は製品の安全に関わる問題として捉えられ、グローバルで進んでいる議論から学べることが数多くあります。AIだけに閉じる論点がほとんどない中、今後の不確実な時代において、どのようなAIガバナンスを実現するかに関する検討は、社会全体のリスク対応の議論にも直接つながっていくとの考えが示されました。
最後に、これから直面する様々なリスクに対応する観点から、今後も参加者が積極的にAIGAの活動に関わり、意見を発信することによって、日本社会がさらに良くなることへの期待でスピーチを締めくくり、設立記念シンポジウムは終了となりました。
AIGAは2024年10月をもって、任意団体から一般社団法人に移行して、新たな一歩を踏み出しました。今回の一般社団法人化をきっかけに、運営体制の充実とさらなる実践知の蓄積を進めるとともに、それらを活かして「AIガバナンスナビ」の運用などの新たなプロジェクトを本格的に始めます。加えて、今後も変化を続けていく政策や制度の枠組みに関する検討や提言もより積極的に取り組みたいと考えています。
今後もAIGAは、「AIガバナンス」があたりまえに定着した社会を目指し、日本のAIガバナンスをめぐる議論のハブとして活動を続けていきます。