2024年3月21日(木)に、AIGAの設立以降の活動を振り返りつつ、今後企業に求められるAIガバナンスの社会実装について意見交換・交流を行う会員向けのミートアップイベント「【AIGA Meetup #1】AIガバナンスの「社会実装」に向けて〜先進企業と語る”次の一手”」を開催しました。
ゲスト・理事・賛助会員等も含めて100名超の参加申込があり、自民党のポリシーメーカーの皆様からのオープニングスピーチ、AIガバナンスの分野で先端的な取組をされている損保ジャパン・セブン銀行の2社からの事例共有、NECも交えたパネルディスカッションなどを通じて多くの方にAIガバナンスに取り組む上での課題感や目指す方向性についてご議論いただき、盛会となりました。
以下、会の様子の一部をお伝えします。
開催概要
主催:AIガバナンス協会(AI Governance Association)
日時:2024年3月21日(木)18:00-20:00
会場:WeWork 神谷町トラストタワー
プログラム内容
オープニングスピーチ
AIGA活動の振り返りとネクストステップ
AIガバナンスケーススタディおよびパネルディスカッション
ネットワーキングセッション
ゲスト・登壇者など
- ゲスト
- 平 将明:自由民主党デジタル社会推進本部「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」座長
- 平井 卓也:自由民主党デジタル社会推進本部長
- 尾﨑 正直:自由民主党デジタル社会推進本部「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」前事務局長
- 小森 卓郎:自由民主党デジタル社会推進本部「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」事務局長
- 平本 健二:IPAデジタル基盤センター長・AIセーフティ・インスティテュート事務局長
- 登壇者
- 佐久間 弘明:AIGA事務局長、Robust Intelligence政策企画責任者
- 石川 隼輔:損害保険ジャパン株式会社 DX推進部 開発推進グループリーダー
- 中村 義幸:株式会社セブン銀行 コーポレート・トランスフォーメーション部長
- 孝忠 大輔:日本電気株式会社 AI・アナリティクス統括部長 兼) NEC Generative AI Hub シニアディレクター
- 参加理事
- 生田目 雅史:東京海上ホールディングス 常務執行役員CDO グループデジタル戦略総括
- 羽深 宏樹:スマートガバナンス 代表取締役CEO・京都大学特任教授・弁護士
- 山本 忠司:三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役常務 デジタルサービス事業本部長 兼 グループCDTO
オープニングスピーチ
本イベントでは、AIに関わる政策・制度の検討をリードされている4名の自民党議員にご出席いただき、平議員、平井議員からオープニングスピーチをいただきました。
スピーチ内では、AI政策をめぐる最先端の動向や、AIGAへの期待についてお話いただきました。
社会課題解決やビジネスの発展のため、日本を「世界で一番AIが実装しやすい国」にするべく取り組んでいること、そのためにAIのガバナンスが重要トピックであることが強調されました。また、望ましいAIガバナンスの社会実装を推進していくため、実際にAI実装に携わる民間事業者の知見を結集し、制度づくりにも関与していくことが不可欠である、とのメッセージもいただきました。
AIGAでは2024年2月にも自民党「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」でプレゼンを行っていますが、AIGAが今後も継続して自民党をはじめとした政策議論の場に知見や事例を届け、官民連携のもと地に足のついたルールメイキングを進めることへの期待も両議員から寄せられました。それぞれの議員のスピーチ詳細は以下の動画をご覧ください。
AIGA活動の振り返りとネクストステップ
AIGA事務局長の佐久間弘明から、AIリスクをめぐる最新動向や今後の各WGでの活動の方向の見通しなども交えつつ、会員全体向けのアップデートをお伝えしました。今後の活動のキーワードとして”Principles to Practices”を挙げ、ビジネスにおけるAIガバナンスの社会実装を推進するハブとして、AIGAの活動を進めていく方向性をご説明しています。
AIGAのこれまでの活動成果、「AIガバナンス行動目標」を踏まえた協会全体での活動方針、海外機関とのコラボレーションを含む直近のイニシアティブの詳細については以下の動画をご覧ください。
AIガバナンスケーススタディおよびパネルディスカッション
損保ジャパン・セブン銀行・NECからAIガバナンスの最前線の現場で活躍されている登壇者をお招きし、具体的なAIガバナンスの取組をめぐるディスカッションセッションを実施しました。
損保ジャパン石川様・セブン銀行中村様のお二人から自社の取組について事例共有をいただいた後、ファシリテーターのNEC孝忠様から自社との対比も踏まえた深掘りや会場からの質問も交えて議論を深めました。
損保ジャパン様事例のポイント
- 自社における先端技術の内製化に向けて、LLM含む生成AIのビジネス活用も推進
- 保険商品に関する代理店等からの照会に対して社内リソースを参照して回答するチャットボットを開発・運用中
- 将来的なユーザ拡大に応じて飛躍的に高まるリスクに備え、全社規程の策定と、客観的な視点からのテストを通じたAIリスクの第三者検証をいち早く実行
セブン銀行様事例のポイント
- ビジネス部門とリスク部門が共同でAI・データ活用事業の推進とガバナンスを担う
- ATMを通じて様々なサービスにアクセスできる「+Connect」を開始し、ATM関連の複数のコア業務にすでにAIを導入済
- AIテストツールを導入し開発フローを効率化するほか、ガイドラインを策定し社内に生成AI使用を開放するなど「走りながら考える」ガバナンスを実践
パネルディスカッションでの主な議論ポイント
- AIプロジェクトの立ち上げ期における、ビジネスを推進する「攻め」の機能とリスク対策を手がける「守り」の機能を跨いだ連携を確保することの重要性
- 生成AIの出力の誤りを低減・防止したり、精度を向上させるための技術的なアプローチ
- 社内の多数のモデルを開発・運用プロセスを通じて管理していく上での留意点
- 社内ルール策定・社員教育等での、政府ガイドラインの活用方法
- 社内でAI活用が広がる中での、データ保護や入力統制の考え方・取組
AIガバナンスの議論は「社会実装」のフェーズへ
AIガバナンス協会(AIGA)発足から半年弱。AIリスクへの対応を求める社会からの要請は日増しに高まっています。各国でのAIセーフティ・インスティテュートの設立や、総務省・経産省による新AI事業者ガイドラインの策定などがそれを示す直近の動きでしょう。
こうした動きにより、AIガバナンスのコンセプト・目指すべき方向性について徐々に社会的な合意が図られていく中、次に課題となるのがそうしたコンセプトを具体化する「社会実装」です。その担い手となるのは、AIのビジネス活用を現場で担う民間企業に他なりません。
AIGAではこの「社会実装」を2024年の重要課題と考え、その後押しのための活動を活発化させていきます。